後期科別プログラム(家庭医療研修)

はじめに

人がいて、家族がいて、暮らしや人生があり、地域がある-このひとつひとつに向き合う医療を「家庭医療」と呼ぶならば、今日ほど家庭医療が求められる時代はないと思います。
格差社会、高齢化社会が進行する地域の中には、子供、働くものからお年寄りまでさまざまな問題を抱えた患者がいます。こうした中で、患者に向き合い、問題を共有し、ともに解決に努力すること、地域の期待やニーズに応えていくことは決して簡単なことではありません。 しかし、こうした問題や困難に立ち向かうことこそが自らを成長させる力になるのも事実です。私たちが地域を基盤にした研修プログラムを立ち上げた理由もそこにあります。
私たち倉敷医療生協は、6万人の組合員、3つの病院、1つの老健、5つの医科診療所、 6つの歯科診療所、3つの訪問看護ステーション・ヘルパーステーション・デイサービスセンターを有し、住民による保健活動を基礎に、 地域に根をはった保健・医療・介護・福祉の総合的な活動を展開しています。「人がひととして大切にされる社会をめざし、保健・医療・介護の事業と運動をとおして、さまざまな人たちと手をつなぎあい、平和と暮らしを守り、健康であかるいまちをつくります」という私たちの理念を日常の活動の中で輝かせたいと思っています。
こうした実践とフィールドを通して、私たちの「家庭医療研修プログラム」は、「患者の気持ち、家族の事情、地域の特性を考慮したエビデンスに基づく患者中心の医療を実践できる医師」(葛西)、地域医療を担う医師の養成をめざします。情熱あるレジデントの参加をお待ちしています。なお、このプログラムは日本プライマリ・ケア連合学会が提示した家庭医療後期研修プログラムガイドラインに完全に準拠し、日本プライマリ・ケア連合学会から認定されています。

研修目標

1.一般目標

後期研修を修了した医師が、地域の中で診療所もしくは小規模病院の家庭医として医療・介護・保健活動を行っていくために必要な知識・技能・態度を修得する。

  1. 家庭医を特徴づける能力を身につける
  2. 家庭医に必要な医学的な知識と技術を身につける
  3. 教育と研究を実施できる能力を身につける
  4. すべての医師が備える技術を獲得する

2.個別目標

(1)家庭医を特徴づける以下の能力を身につける

  1. 患者中心・家族志向の医療を提供する能力を身につける
    1. 適切な病歴と身体所見をとることができる
    2. 頻度の高い疾患、見逃してはならない疾患など鑑別診断を上げることができる
    3. 検査の選択と解釈ができ、鑑別診断を絞り込むことができる
    4. 安全で費用対効果に優れる治療プランを提示することができる
    5. 必要不可欠な手技を習得する
    6. 意思決定の過程での情報収集と批判的吟味ができ、診療に活用できる
    7. 患者や家族と信頼関係を形成し、共感的な態度で診療することができる
  2. 包括的で継続的、かつ効率的な医療を提供する能力を身につける
  3. 地域・コミュニティをケアする能力を身につける
    1. 保健・予防の観点から診療でき、健診・保健指導を行うことができる
    2. 地域の保健・医療・福祉システムを理解し、有効に活用できる
      また、予防・健康教育に関する事業を理解し参加できる。利用できるサービスを理解し評価できる
    3. 地域の健康に関する計画やサービスへ参加できる

(2)家庭医に必要な以下の医学的な知識と技術を身につける

  • 健康増進と疾病予防
  • 幼小児期・思春期のケア
  • 高齢者のケア
  • 終末期のケア
  • 女性の健康問題
  • 男性の健康問題
  • リハビリテーション
  • メンタルヘルス
  • 救急医療
  • 臓器別の問題 : 循環器系、呼吸器系、消化器系、代謝内分泌系、神経系、腎・泌尿器系、リウマチ・筋骨系、産婦人科、皮膚科、耳鼻咽喉科、眼科

(3)教育と研究を実施できる能力を身につける

  • 教育 : (1) 成人学習理論、(2) フィードバックの技法、(3) 5つのマイクロスキルを用いた教育技法
  • 研究 : (1) 医学的研究デザインに対する知識と理解、(2) 研修期間にプライマリ・ケアに関する研究

(4)すべての医師が備える技術を獲得する

  • 診療に関する一般的な能力を習得し、利用者と良好にコミュニケーションができる
  • プロフェッショナリズムを身につける
    1. 患者・家族や社会のニーズに適切に対応できる
    2. 患者・家族・社会・医師・医療従事者に対する説明責任を果たすことができる
    3. 診療の中で医療倫理問題を認知でき、適切に対応できる
    4. 患者の人権、患者と家族の価値観を尊重し、公正な態度で対応できる
    5. 生涯学習を通して標準的な診療能力を維持することができる
  • 組織・制度・運営に関する能力を身につける
    1. 日本の保健・医療・福祉制度を理解することができる
    2. 施設の管理・運営に参加することができる
    3. 患者の利便性・リスクマネジメント・財務・経営に関するマネジメント・スタッフの管理・教育ができる
    4. 施設内外のスタッフとチーム・ネットワークを形成することができる

カリキュラムの概要

[研修対象]
新医師臨床研修(初期研修)2年間修了者、もしくはそれに準じる医師
[研修期間]
3年
[研修対象]
  • コア・プログラム、現場ニーズ、個別ニーズをすり合わせた個別プログラムを重視している
  • 3年間診療所の外来を継続できるプログラム。研修で学んだことを常に診療所で検証できるシステムである
  • 小児科については3年間外来医療を継続することが可能なシステムである
  • 日本内科学会認定医制度教育病院・中小病院総合内科・小児科ブロックなどにおける多彩なリソースが利用可能である
  • 3年間とおした外来選択研修で、幅広い診療能力を研修することが可能である
  • 医療生協を基礎にした種々の保健プロジェクト(保健大学・班会・あおぞら健診)に参加できる
  • シニアレジデントとしてジュニアレジデントの指導を経験し、研修医のチームリーダーとしての役割を学ぶことができる

3年間のスケジュール

1年目

2年目

3年目

玉島協同病院で、家庭医療専門研修を6ヶ月以上
水島協同病院で、内科の入院外来を6ヶ月以上
水島協同病院で、小児科内科の入院・外来を3ヶ月以上
※週1日4ヶ月の研修を、ブロック研修期間1ヶ月と置き換えることができる

研修施設

[家庭医療専門研修施設]
玉島協同病院(中小病院総合内科)
[必修(内科・小児科)の領域別研修施設]
水島協同病院(日本内科学会認定医制度教育病院)
※総合診療内科方式+循環器・呼吸器・消化器・救急などが経験できるようプログラムを組む
[望ましい領域別研修施設]
水島協同病院(日本内科学会認定医制度教育病院)
※水島協同病院で、以下の外来研修を週1単位で計画的に研修できるようプログラムを組む
産婦人科(女性外来)・整形外科・皮膚科・精神科(ストレス外来)・泌尿器科・眼科・耳鼻科・産業外来

具体的方略

医療
外来診療(初期診療・継続した診療・慢性疾患医療): 外来診療を経験する
小児科外来診療 : 水島協同病院での外来診療 1単位/週
往診・在宅ケア : 玉島協同病院で 1単位/週
救急医療 : 総合病院水島協同病院救急外来での日直・当直勤務 5回程度/月
外来選択研修 : 内科・小児科以外の科の外来診療に参加する
リハビリ・終末期医療 : TCSTの活動、ホスピス・ケア・チームの活動に参加(総合病院水島協同病院)
保健
予防接種
健診と保健指導(成人): 各施設にて実施
乳児検診
学校健診
福祉
生活保護・医療費の公的支援について学ぶ
介護
介護保険制度について学ぶ
主治医意見書・訪問看護指示書の作成を行う
調整会議を実施し、在宅ケアの調整を行なう
健康教育
介護保険制度について学ぶ
主治医意見書・訪問看護指示書の作成を行う
調整会議を実施し、在宅ケアの調整を行なう
産業医
産業医の講習に参加し、資格を取得する
教育システム
ポートフォーリオの作成、ひとりプロジェクト、研修医回診
総合病院水島協同病院の内科早朝カンファレンス
週1回の医局カンファレンス(水曜日・午後4~6時)、その他各種カンファレンス
ジャーナルクラブの定期開催
週1回の研修医会
学会発表
治療研究 : 研修期間にプライマリ・ケアに関する研究を実施する
手技の研修
超音波エコー(腹部・心臓・血管)、小児の採血・静脈注射・血管確保、胃管挿入、胸部・腹部単純X線読影、CT画像読影、心電図読影、胸腔穿刺、腹腔穿刺、腰椎穿刺、骨髄穿刺、関節内注射、トリガーポイント注射など
施設の管理・運営
診療所の管理運営の仕方について学習する

研修支援

  1. メンタリングによる支援システム
  2. 外部ファカルティ

研修評価

  1. ポートフォーリオ
  2. セルフ・アセスメントシート、月1回の医師研修委員会における評価・相互評価
  3. 年2回の研修管理委員会
  4. 学会発表、論文による評価
  5. 1年次、2年次の終了時評価
  6. MCQ、CSA、批判的文献読みによる終了試験

取得できる資格

日本プライマリ・ケア連合学会 家庭医療専門医

終了後の進路

本人の希望や適性に応じて決定、倉敷医療生協の各施設での就労の継続が可能

指導体制

[研修プログラム責任者]里見 和彦 (家庭医療指導医)

[研修指導者]

【玉島協同病院】進藤 真 (家庭医療)中尾 英明 (家庭医療)
【総合病院 水島協同病院】里見 和彦(内科) 丸屋 純(内科) 畑野 樹(内科) 高山 裕規(小児科) 木下 修一(小児科) 山本 明広(一般外科) 遠藤 健一郎(精神科) 西澤 正人(整形外科) 戸田 志保(皮膚科) 武田 繁雄(泌尿器科) 内田 浩志(耳鼻科) 大木 雅登(放射線科)吉井 健司(内科) 木下 修一(小児科)
【研修管理体制】
水島協同病院研修管理委員会、研修指導医会、医師研修委員会

募集定員

1名

出願書類

後期研修申込書、履歴書、医師免許証(写)、臨床研修修了登録証(写)または臨床研修修了見込証明書

申し込み・問合せ先

総合病院水島協同病院 医師臨床研修センター 岸本 友也
〒712-8567 岡山県倉敷市水島南春日町1-1
TEL)086-444-3211 FAX)086-444-3230

募集及び試験日

随時募集、随時選考

選考方法

選考方法 : 出願願書・面接試験により総合的に審査

PageTop